税務会計論
2022年1月25日税務会計論2 第14回 2022年1月25日
早稲田大学 商学部 税務会計論2
第14回目の授業です。
早いもので、とうとう最後の授業となりました。
前半は国際課税の続きについて説明し、後半は税効果会計について授業をおこないました。
外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)
以前はタックス・ヘイブン税制と呼ばれていましたが、改正を経て外国子会社合算税制と呼ばれるようになりました。
税率の低い国(地域)にあるグループ会社に、所得を移転して国内の法人税を減らそうとする行為を規制する趣旨です。
「無税または税率の低い国にペーパーカンパニーを設立&配当をおこなわず所得を国外に留保」することによる、国際的な租税回避を規制しています。
国外にある会社は本当にビジネスをしている会社なのか単なるペーパーカンパニーなのかを判定するため、「経済活動基準(適用除外基準)」というものを規定し、経済的実体があるかどうかを判定することとしています。
ざっくり説明しますと、国外の会社のペーパーカンパニー度を3段階に分類し、その態様に応じて課税方法を調整しています。
1. 特定外国関係会社→税率関係なく会社全体を合算(税率30%以上は免除)
2. 対象外国関係会社→税率20%未満の場合は会社単位の合算
3. 部分対象外国関係会社→税率20%未満の場合は受動的所得(配当など)を合算
外国税額控除
これは分かりやすいですね。
外国で先に納税していたら、その分は日本で納税しなくていいという制度です。
所得税にも同じ制度があります。
日本の法人が海外で納税した税金を、日本の法人税の計算において税額控除できる制度です。
注意点としては、高率負担部分(税率35%超)は税額控除不可だという点です。
例えば、A国で所得100に対して税金40を納めていたとしても、日本で税額控除できるのは35までとなります。ただし、超過分の5は税金費用ですから損金算入して所得から減らすことができます。
(実際は細かい計算がありますので、あくまでイメージです。)
税額控除対象となる税金は、所得を課税標準とする税金(法人税など)に限定されていますので注意です。
固定資産税などは対象外になりますね。
日本と海外では、会計期間のズレや税制の違いなどから、所得発生の時期と課税(納税)の時期に不一致があることから、控除の過不足額等について3年間繰り越しが可能となっています。(こちらも詳細は条文等でご確認ください。)
みなし外国税額控除(タックス・スペアリング・クレジット)という制度もあります。
開発途上国では、海外企業を誘致するために、特別に税率を低くしてくれる特典を用意しているケースがあります。
せっかく税制上の特典を利用して開発途上国に事業展開したのに、その得した税金分を日本で課税されてしまっては、開発途上国が用意した税制上の特典の意味がなくなってしまいます。
そこで、その得した税金分は外国ですでに納税されたものとみなして、日本の法人税から控除できる制度です。
理にかなったよい制度ですよね。
税効果会計
本当は税効果会計だけで何回も授業でできてしまうくらいのボリュームです。
授業では概要のみ説明させてもらいました。
会計と税務は一致せず、そのズレを申告調整して、利益(会計)から誘導的に所得(税務)を計算しました。
ですので、会計上の利益は直接的に税額とリンクしていない関係になっています。
つまり、「利益×税率=法人税」となっていないのです。
会計上の利益に見合った税金費用が計上されるように、『企業会計』と『税務会計』の違い(ズレ)を調整し、適切に期間配分する手続きを税効果会計といいます。
税効果は、将来解消される差異(一時差異)が対象となり、永久に解消されない差異(永久差異)は対象となりません。
一時差異 | 永久差異 |
『企業会計』と『税務会計』の認識時期のズレによるもの | 『企業会計』と『税務会計』の考え方自体が異なるもの |
いずれ解消されるズレ | 永久に解消されないズレ |
税務上認められない評価損(棚卸資産等) 減価償却超過額 貸倒引当金の損金算入限度超過額 退職給付引当金 賞与引当金 積立金方式による圧縮積立金 |
交際費等の損金不算入額 役員給与の損金不算入額 受取配当金の益金不算入額 |
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