税務会計論
2021年11月30日税務会計論2 第8回 2021年11月30日
早稲田大学 商学部 税務会計論2
第8回目の授業です。
11月19日に公認会計士 論文式試験の合格発表がありました。
履修してくれている生徒さんにも見事合格した方がいらっしゃいました。おめでとうございます!
OBといたしましては、稲門の会計人が増えるのはとても嬉しいです!
今回は固定資産の取得原価と減価償却について授業をおこないました。
<授業概要>
事例研究=未経過固定資産税等相当額
裁決事例 平成25年8月30日裁決
いわゆる「固都税の精算金」の話です。
普段から不動産取引に携わっている方からすれば、何をいまさらという感じかもしれません。
売主がすでに納税している固定資産税等について、売買日以降の期間に相当すると思われる金額を、日割りで買主から売主に支払うという処理です。
「固定資産税等相当額」というネーミングから、買主は租税公課として売買が発生した事業年度に損金算入しそうなところです。
しかし、実際に買主が負担する税金ではなく、「固都税の精算金」は売買条件の一部に過ぎないことから、固定資産の取得価額に含めて、その後の減価償却に伴って損金算入していくことになります。
実務としては定着しているところと思いますが、裁決事例を読むとその考え方や法的根拠を理解することができます。
償却方法
平成28年4月から、「建物附属設備及び構築物」は“定額法”しか選べません。
“定率法”は採用できなくなっていますので、ご注意ください。
耐用年数(償却年数)
会計の考え方では、資産の利用状況等を検討して、会社の経営状態を適切に決算書に反映するため、経営者が独自の判断で資産の耐用年数(償却年数)を決定することになります。
しかしながら、経営者が自由に耐用年数を決定してよいことにすると、利益操作を許容することになり、公平に法人税を課税することが難しくなりますので、法人税法では耐用年数を資産の種類ごとに一律で決めることとしています。
「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の耐用年数表に基づいて耐用年数を決定することになっています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340M50000040015
「監査・保証実務委員会実務指針第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」(最終改正 平成24年2月1日 日本公認会計士協会)では、
「多くの企業が法人税法に定められた耐用年数を用いており、また同様に残存価額の設定についても、多くの企業が法人税法の規定に従っているのが現状である。このような事情に鑑み、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理する場合においては、企業の状況に照らし、耐用年数又は残存価額に不合理と認められる事情のない限り、当面、監査上妥当なものとして取り扱うことができる。」
とされており、法人税法の規定に従って減価償却費の計算をしていれば、会計上も適正と認めるとされています。
「償却限度額」、「償却超過額」、「認容額」
税務上適正に計算した償却額を(税務上の)償却限度額といいます。
償却限度額を超える金額を会計上減価償却費として計上してしまった場合、差額を償却超過額といいます。
償却超過額は税務上損金として認められませんから、税務調整により所得に加算(損金不算入)します。
償却超過額は将来損金算入できるバッファみたいなもので、将来的に償却不足額が発生したときに、償却限度額を超えない範囲で過去の償却超過額を所得から減算(損金算入)することができます。過去の償却超過額のうち損金算入した額を認容額といいます。
なお、償却不足額とは会計上の減価償却費が償却限度額を下回った金額です。
次回は減価償却(事業供用日)に関する事例研究からスタートする予定です。
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